中国の首都北京は、中国の政治の中心というだけでなく、域内総生産(GDP)も上海に次いで多く、1,000社近い日系企業が進出しているメガ商業都市でもあります。位置的には、青森市とほぼ同じ緯度にあり、夏は涼しく冬はかなり寒く、真冬は氷点下10℃以下になることもあります。北京市の面積は日本の四国4県分に相当する広大な都市で、人口は2,154万人(2018年12月現在)で、中国国内で重慶、上海に次いで人口が多いです。

北京に赴任や移住が決まると、現地の治安や家賃などの住宅事情、食費やインターネット費用などの物価や生活費がどの程度なのか気になるでしょう。移動する前に最低限の情報は知っておきたいものです。

この記事では、北京の住宅事情や家賃、水道光熱費、インターネット費用、食費、医療費、交通費などについて解説します。

 

住宅事情と家賃

住宅事情と家賃<Photo by Sam Balye on Unsplash>

北京は中国の中では比較的治安は安定していますが、北京で賃貸物件を借りる際にはトラブルが発生しやすいため、信頼できる不動産会社を利用することが大切です。

部屋を借りている人が大家に無断で又貸しをしたり、虚偽の賃貸情報を載せたりすることも多いので気をつけましょう。入居後のトラブルも多く、お湯が出なくなったりトイレが詰まったりなどの水回りのトラブルが多いため、入居前に入念に物件をチェックしてから契約することが必要です。

北京の平均的な家賃水準は、1LDKで平均約80,000円(5,333元)です。しかし、治安の良いので日本人が多く暮らす燕莎・麗都(イェンシャ・レイト)エリアや亮馬橋(リョウバキョウ)エリアでは、さらに家賃は高額になります。人気の各エリアを簡単に説明しましょう。

燕莎・麗都(イェンシャ・レイト)

多くの日系企業のオフィスがあり、寿司屋を始め、日本の居酒屋チェーン店や日本食レストランを簡単に見つけられます。首都国際空港から燕莎・麗都(イェンシャ・レイト)エリアは車で約20分ですので空港を利用することが多い方には便利です。

また、麗都エリアには日本人学校や日系学習塾などが多くあり、子ども連れのファミリー層にも人気のエリアとなっています。

亮馬橋(リョウバキョウ)

日本、アメリカ、フランスなど各国の大使館があり、駐在している外交官たちとその家族が住むマンションがたくさんあります。インターナショナルスクールもあり、海外志向のお金持ちの中国人や外交官ファミリーなどの、富裕層の外国人も沢山歩いています。「亮馬駅」の隣りの駅「三元橋」は首都北京空港への急行が停まる駅なので、空港へのアクセスが便利です。

各地区の家賃目安は以下のとおりです。

燕莎・麗都(イェンシャ・レイト) 3LDK マンション 160平米程度  約20万円~35.5万円(13,000~23,000元)
亮馬橋(リョウバキョウ) 3LDK マンション 160平米程度  約23万~37万円(15,000元~24,000元)

敷金は家賃の2か月分が相場で、原則として退去時に全額戻ってきます。
礼金や印紙税などは不要で、賃貸物件を借りる際には、家賃2か月分の敷金と前家賃(家賃の1か月分)、仲介手数料が必要です。

賃貸物件を借りる際の注意点として、日本では同じマンションで同じ間取りの部屋の場合、内装はほぼ同じですが、北京では同じマンションでも部屋ごとに内装が違ってきます。
また、高級マンションであっても、内装や設備が貧弱なことがあるので、必ず自分の目で確認したうえで契約することが必要です。

北京の治安は比較的良いですが空き巣や泥棒には気を付けましょう。マンションの防犯対策がきちんと施されているのかも事前に確認しておくことも大切です。

 

医療事情と医療費

医療事情と医療費

<Photo by Arseny Togulev on Unsplash>

北京には日本人医師や日本語が堪能な中国人医師や看護師が常駐している病院が複数あり、多くの日本人駐在員はこれらの病院を利用しています。北京在住の日本人が利用する病院の医療水準は高く、日本の総合病院と同水準の先進医療が受けられます。
海外資本の外国人向けクリニックであっても、日本語通訳スタッフがいるので日本語で意思疎通ができます。

代表的な外国人向けの医療施設は、亮馬橋のラッフルズメディカル北京クリニックで、小児科を含む外来全科診療を行っています。
日本人医師,日本人スタッフが常勤しているので安心です。

また、常時日本語による電話受付をしてくれている北京天衛診所(龍頭クリニック)は、日本人歯科医師による治療も受けられ、日本人スタッフが常時対応します。北京の医療費は日本と比べるとかなり高額です。風邪の治療でも15,000円(約1,000元)程度かかったり、入院したり手術をすると1,000,000円(65,000元)以上の費用がかかったりすることもあります。
海外旅行保険や、企業が契約している保険サービス、または個人で加入できる保険に入っておきましょう。

現地で個人が加入できる医療保険としては、MSH China(英語)、またはハイエンド医療保険が代表的です。スタンダードプランであれば、月額18,000円程度で加入できます。

 

水道・光熱費

水道・光熱費

<Photo by ナンバーさん on PhotoAC

北京の水道料金は日本よりも安く、水道代は900円(60元)程度で、2ヶ月に1回検針が行われ、2ヶ月分をまとめて支払うことになります。

北京の水道水は衛生的には飲用可能とされていますが、軟水の日本とは異なりカルシウムの含有量が多い硬水ですので、多くの日本人は、慣れるまではお腹を壊しやすいようです。
飲み水やうがいの際の水は、一度煮沸させてから飲むようにしましょう。
ウォーターサーバーは必需品ですが、賃貸物件の多くはあらかじめウォーターサーバーが設置されています。

ウォーターサーバーの料金は、18リットルサイズ1ボトルで300円(約20元)程度になります。北京の大気汚染は以前に比べると改善されているものの、PM2.5の濃度は世界保健機関(WHO)が安全とする基準値の約4倍の濃度ですので、室内には空気清浄機が欠かせません。
普段から外出する際にも、濾過性能の高いマスクを着用して身を守ることが大切です。

窓を閉め切って、エアコンや空気清浄機をフル稼働すると電気代は高くつきますが、北京の光熱費は日本よりも安く、1ヶ月で9,000円(約600元)程度です。なお、北京のマンスリーマンションやサービスアパートメントは、水道・光熱費が家賃に含まれている場合もあります。

 

インターネット事情と通信費用

インターネット事情と通信費用<Photo by himawariin on PhotoAC

中国では上海がもっともWi-Fi環境が充実していることで有名で、北京は上海と比べると遅れています。しかし、フリーWi-Fiのスポットは日本よりも多く、カフェやレストラン、公共施設、路線バスの中などは無料でWi-Fiを利用できます。
なお、北京はインターネット規制が徹底しており、GoogleやFacebook、LINE、YouTubeなどのサービスは基本的には利用できません。

北京でGoogleやFacebookなどを利用するにはVPNを使用することが必要ですが、2019年12月現在は香港デモなどの影響でVPN規制も厳しくなってきており、北京で使用できるVPNは限られています。

日本人駐在員の多くは、上海に渡航する前に中国からのアクセス情報を変換するVPNサービスを契約しています。

日本人駐在員の多くが使っているセカイVPNの月額料金は1,000円程度になります。中国のキャリアを利用する場合の料金は月額900円(60元)、通話料は1分1.5円~7.5円
(0.1~0.5元)程度です。

北京の賃貸物件の多くはWi-Fiを無料で利用できるため、通信費があまり高額になることはないでしょう。

 

交通費

交通費

<Photo by zhang kaiyv on Unsplash>

北京は広大ですが、地下鉄や路線バスなどの公共交通機関が発達しており、地下鉄やバス、タクシーなどで市内各所に移動できます。

地下鉄の料金は約45円(3元)~で、路線バスの運賃は約30円(2元)~、タクシーの初乗り運賃は約195円(13元)で、日本と比べるとかなり安いです。北京の地下鉄の治安は良く、日本の地下鉄と同じような感覚で利用できます。少し違うのは、改札口で手荷物のX線検査があり、中国政治の中枢である天安門広場に近くなるほどセキュリティが厳重になることです。

主要ターミナルの北京西駅は中国各地から大勢の人が集まるためあまり治安が良くなく、スリや置き引きなどがよく発生するので、十分に警戒しましょう。

タクシーを利用する場合は、ほとんどのタクシーの運転手は中国語しか通じません。中国語を話せない人は、行き先を漢字で紙に書いて渡すと良いでしょう。

なお、北京には悪徳タクシーが多いので、タクシーを利用する場合はナンバープレートに「京B」と書かれた正規タクシーを利用するようにしてください。

 

食費

食費

<Photo by fan yang on Unsplash>

北京で外食をする場合、ローカルのレストランでの食事は1人750円(50元)程度です。

少し高級でおしゃれなレストランでは1,500円(100元)程度ですので、日本とあまり変わらない感覚です。北京にはカルフールやウォルマートなどの外資系スーパー、イトーヨーカドーなどの日系スーパー、BHGなどの中国の高級スーパー、地元のローカルスーパーがあります。

スーパーで販売されている食料品は中国産のものは安く、米1Kg150円(10元)、食用油1リットル200円(13,3元)程度です。目安としては、外資系スーパー・中国系高級スーパーはローカルスーパーの約2倍、日系スーパーはさらに2倍という感覚です。多くの日本人在住者は、日系スーパーで買い物をしていますが日本からの輸入される食料品はかなり高いので、日本の食材にこだわるのであれば、食費はかなり高くつきます。

日系スーパー、外資系スーパーを主に利用した場合の1か月の食費は70,000~80,000円程度が目安でしょう。

 

まとめ

まとめ

<Photo by zhang kaiyv on Unsplash>

北京での1か月の生活費は約43万円になります。

家賃 300,000円 燕莎・麗都(イェンシャ・レイト) 3LDK
医療費 18,000円
水道・光熱費 10,000円
通信費 2,000円
食費 80,000円
交通費 15,000円(約1,000元)
合計 425,000円

北京は家賃が高いため、家賃が生活費のかなりのウェイトを占めます。

その他の生活物価は日本と同程度か、安い傾向にあり、家賃を除くと北京の物価はそれほど高いわけではありません。

賃貸物件選びでは、不正確な賃貸情報も多く、入居後のトラブルも多いので慎重に選ぶことが大切です。マンスリーマンションやサービスアパートメントであれば、万一、トラブルが発生してもすぐに対応してくれる可能性が高いです。

また、家具や家電製品などもあらかじめ完備されているので、マンスリーマンションやサービスアパートメントであれば、すぐに入居して快適な生活を送れます。日本人向けのマンスリーマンションやサービスアパートメントは、ハウスキーピングや日本語での対応サービスなどが付いているものが多く、1年間の長期契約にすることも可能です。

北京での家探しの苦労を軽減したい方は、手軽に借りられ、ホテルのように暮らせるマンスリーマンションやサービスアパートメントも選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。