グローバルに活躍するビジネスパーソンの代名詞とも言えるMBAは、日本国内でも取得可能です。
渡航費や滞在費まで考えるとMBA留学は負担が大きくなりますが、名の通った海外のビジネススクール(経営大学院)でMBAを取得すると、世界で評価される確率がぐんと上がります。

優秀なビジネスパーソンの多くが、大きなお金と長い時間を「投資」と考えてMBAのために海外留学するのには、納得する理由があるのです。

この記事では、学費や生活費などMBA留学に必要な費用、ビジネススクールの選び方などを解説し、MBA留学におすすめの国やランキング上位校についても紹介します。

MBAとは?

MBA(Master of Business Administration)は、日本語では「経営学修士」の学位で、ビジネススクールに通って定められた単位を修得すると獲得できます。

MBAを取得するには、ビジネスリーダーに求められる広範な知識とスキルを徹底的に学習することが必要です。
ビジネススクールで習得する科目は、財務分析やマーケティング、リーダーシップやオペレーション管理など実に幅広く、これらの科目を1~2年という短期間で習得するのはかなりハードといえるでしょう。
試験はもちろん、論文の提出やグループプロジェクト、スピーチ、プレゼンテーションなどの与えられた課題に合格することが必要で、MBAを取得するまでは必然的に勉強漬けの毎日を送ることになります。

授業は実際のビジネスシーンを想定した実践的内容が多く、かなり高度なので覚悟を決めて勉強しないとMBAを取得することは難しいでしょう。

MBAの受講スタイルの種類

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<Photo by javier trueba on Unsplash>

MBAを取得するにはビジネススクールに通うことが必要ですが、MBA取得のための受講方法は大きく分けて以下の4種類があります。

・海外フルタイムMBA
・国内フルタイムMBA
・国内パートタイムMBA
・オンラインMBA

いずれのスタイルも、MBAを取得するまでには最低でも1~2年かかります。

海外フルタイムMBA

国内で働いている日本人が海外でMBAプログラムに参加するには、現在の会社を退職、または休職して留学し、海外のビジネススクールに通うことになるでしょう。
会社によっては社内にMBA留学制度があり、会社に籍を置きながら社費で海外MBAを取得できるところもあります。

国内フルタイムMBA

国内であっても、フルタイムのMBA取得プログラムに参加する場合は勤務先の会社を退職、または休職して、日本国内のビジネススクールに通うケースが多いようです。
個人の事情にもよりますが毎週定期的に勉強をとる必要があるので、フルタイムの仕事や家庭との両立が難しいのかもしれません。
国内MBAについても、会社で補助が出るところもあります。

国内パートタイムMBA

国内パートタイムMBAは、現在の仕事を続けながらでも、MBAを取得可能なプログラムです。
日中は仕事や学校に行きながら、夜間や土日を利用して日本国内のビジネススクールに通います。
日本国内でMBAを目指す人の多くは、どちらかというとパートタイムMBAを選ぶ人が多く、世界的にもパートタイムMBAは増えている傾向にあるようです。

パートタイムMBAは、収入を得ながら大学に通うことができるため、フルタイムと比較すると家族や周囲の人の理解が得られやすいですが、勉強時間の確保が難しいため、MBA取得までの期間が長くなる傾向があります。

オンラインMBA

オンラインMBAは、インターネット上の動画講義や通信教材を通してMBAを習得する方法です。
マサチューセッツ工科大学やウェールズ大学のような海外の名門校のMBAプログラムを選択することも可能です。

オンラインでの自宅学習だけでなく、座学や実地授業、面談でのカウンセリングも組み合わせた多彩なカリキュラムを用意している教育機関もあります。
なかなか定期的な時間が取れない方や、留学することが難しい場合は、オンラインMBAという選択もあるでしょう。

海外でMBAを取得するメリット

これまで見てきたように、MBAを取得する方法は様々ですが、海外でMBAを取得すると次のようなメリットが得られます。

・ビジネスレベルの英語力が身につく
・世界じゅうの優秀な受講者と学べる
・世界で通用する経営スキルを習得できる
・留学先での就職や外資系企業への転職するチャンス

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

ビジネスレベルの英語力が身につく

国内のビジネススクールでも英語で行うプログラムがあることもありますが、海外のビジネススクールなら基本的にすべての授業が英語で行われることになります。
試験はもちろん、論文、ディスカッション、プレゼンテーションなどもすべて英語になるため、実際のビジネスシーンに即した適切な表現を授業の中で学びながら成長できるでしょう。

まったく英語に自信がない人であれば、授業についていくのは難しいかもしれません。

世界中から受講者が集まるため、出身国によって違う発音やイントネーションをとらえながら正確にコミュニケーションをとる能力も求められそうです。

世界じゅうの優秀な受講者と学べる

海外の有名なビジネススクールには、世界中から優秀な人材が集まり、切磋琢磨してMBA取得を目指しています。
莫大な費用と時間を費やして留学にきたとだけあって、彼らの本気度は目を見張るものがあるかもしれません。過酷な勉強を続けるうちに友情や仲間意識が自然と芽生えてくるのも不思議ではないでしょう。
「ビジネススクール時代に出会った」「ビジネススクールで意気投合した」ことがきっかけで、仕事のパートナーとして新たな事業を始めたという例もあります。
一緒に学んだ仲間や教えてくれた講師との関係は、海外のビジネススクールでは大きな財産になり、仕事だけでなく今後の人生に大きく影響を与える可能性もあるでしょう。

世界中のトップエリートたちと強固なネットワークを築ける機会が得られるのは、留学して海外でMBAを取得する大きなメリットです。

世界で通用する経営スキルを習得できる

日本の大学で学部時代に経済学や経営学を学んだ人でも、世界のビジネスシーンで通用する実践的な経営スキルを身に着けるのはなかなか難しいでしょう。

日本の企業会計原則は日本国内で特有のものですし、グローバルマーケットを視野に入れたマーケティングや海外人材のマネジメントも経験が必要です。
国内であれ、海外であれ、実際に自分で仕事をしてみたうえで海外のビジネススクールで学ぶことは、今後のキャリアを築く上で多いに役に立つでしょう。

一流のビジネススクールが高い評価を得ているのも、その実践性の高いカリキュラムゆえです。

留学先での就職や外資系企業への転職するチャンス

多くの海外のビジネススクールではインターン制度があります。
MBAを取得後はインターン先の外国企業にそのままスカウトされたり、日本でオファーを受けて外資系企業へ転職したりすることもあるようです。

大手の外国企業や外資系企業は、日本と比べればMBAホルダーを高く評価する傾向があり、MBAを取得することで外国企業や外資系企業への就職する際に有利になる可能性があります。

海外でMBAを取得するのは難しい

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<Photo by Danny on Unsplash>

留学して海外のMBAを取得することはいろいろなメリットがある反面、そう簡単にはいかないという現実もあります。
それは次のような理由からです。

・巨額の費用がかかる
・最低でも中級以上の英語力が必要
・休職または退職をしなければならない
・就職・転職が約束されている訳ではない

それぞれのデメリットについて説明します。

巨額の費用がかかる

海外MBAにかかる費用は、数百万から数千万にもなり、国内MBAに比べると高額になる傾向があります。
もし社費留学制度を利用できれば、費用の一部や全額を会社が負担してくれますが、私費留学をする場合は基本的には全額自己負担になります。

最低でも中級以上の英語力が必要

海外のビジネススクールでは、すべての講義が英語で行われるため、授業についていくだけでも最低限の英語力が必要です。
さらに、海外のビジネススクールの中には筆記試験での入学試験はなく、書類審査のみで選考されることもあります。
筆記試験がないと聞くと、ほっとされる方もいるかもしれませんが、実情はまったく逆で、一定のフォーマットの書類の中で他の候補者より優れていることを英語で明確に示すのは至難の業です。

わかりやすいスキル証明として、TOEFLやGMATといった試験のスコアで示すという方法もありますが、それとて高い基準スコアが設けられています。
一定レベルの英語力がなければ、入学することすら難しいでしょう。

そのため、英語力が一定の水準に満たない場合は、留学する数か月以上前から語学学校に通うなどして勉強し、TOEFLやGMATを受ける人もいるようです。

英語の勉強と並行して、入学に必要な論文や推薦状の準備、面接対策なども必要なので、準備だけでもかなりの時間と労力を要します。

休職または退職をしなければならない

フルタイムで海外のビジネススクールに通うためには、留学して現地で生活を送ることが必要であり、多くの方は勤務している会社を休職、または退職しなければなりません。

社費留学であれば、MBAを取得後は元の職場に復職できますが、私費留学の場合は生活の基盤をいったん失うリスクもあり、相当な覚悟が求められるでしょう。
家族がいる方の場合はなかなか同意を得るのが難しいために、国内MBAやオンラインMBAを選択する人もいます。

就職・転職が約束されている訳ではない

MBAを取得したからと言って、有利な就職や転職が保証されているわけではありません。
実践に近い経営スキルを学んだとしても、実際のビジネス経験として生かせるかは、留学した本人次第といっても過言ではありません。
言ってみればスタート地点に立ったに過ぎないのです。

一般的にいえば外国企業や外資系企業では、MBAホルダーを高く評価する傾向がありますが、MBAの知識があるのと実際に仕事ができるかというのは別として考えられているのも事実です。
反対に今日の変化の多いビジネスシーンでは、1年から2年もの間仕事のブランクができるほうがマイナスととらえる人もいます。
さらに、日本企業でいえば、MBAホルダーを優遇するような企業はまだ少ないようです。

海外MBAを取得したからと言って、優良企業から引く手あまた、というほど甘くはないでしょう。

海外MBAにかかる費用とその工面方法

saving<Photo by Annie Spratt on Unsplash>

海外MBAを取得するには高額な費用がかかります。ここでは海外MBAにかかる費用の目安と、資金を準備する具体的な方法について解説します。

MBA留学中にかかる費用

学費はビジネススクールによって違いがあり、ランクが高くなるほど学費も高くなる傾向があります。

MBAの人気ランキングで常に上位を占めるハーバード大学のMBAのMBAやスタンフォード大学のMBAペンシルベニア大学ワートン校のMBAであれば2年間のコースで1,600万円程度の学費が必要です。

ほかにも、1915年開講の長い歴史を持つイリノイ大学のMBAであれば2年間で約800万円、日本人にも人気のボストン大学のMBAは2年間で約1,100万円が目安と言われています。

人気の高いビジネススクールは都市部にあることが多く、滞在のための生活費も高くなる傾向があります。

郊外にあるビジネススクールであれば、生活コストもそれほど高くありません。学校によっては2年間で400万円程度の学費のビジネススクールもあります。
ただ、留学中の生活費はどんなに抑えても年間で150万円~300万円程度はかかるでしょう。

資金の準備

社費留学の場合は費用の一部や全額を会社に負担してもらえますが、休職や退職をして海外MBAを取得する場合は、基本的に定期収入が途絶えてしまうため、多くの人は奨学金や教育ローンで留学の費用をなんとか工面しています。

入学試験の時点で優秀と認められた方は、返済不要の奨学金で留学できる場合もありますが、かなり狭き門です。

多くの人は、フルブライト奨学金伊藤国際教育交流財団日本人奨学金中島記念国際交流財団などの民間の奨学金制度を利用しています。

教育ローンは、民間銀行や日本政策金融公庫などの政府系金融機関が取り扱っており、民間の奨学金制度と合わせて利用するケースが多いようです。

海外ビジネススクールの選び方

us-uk<Photo by freestocks on Unsplash>

海外MBAを取得するには高額な費用と時間がかかり、ましてや仕事を辞めてチャレンジするとなると人生を賭けた決断になりますので、どの海外ビジネススクールに通うかは慎重に選ぶべきです。

ここでは、後悔しない海外ビジネススクールを選ぶために重要な以下の3ポイントについて解説します。

・国
・MBAランキング
・費用

それぞれのポイントを説明します。

多くの雑誌やメディア調査でのMBAランキング上位校は、アメリカとイギリスのビジネススクールで占められています。アジア圏でいえば中国の勢いが増しています。

もし、渡航先に制限がないのであれば、アメリカやイギリスを選ぶのが間違いないでしょう。
アメリカ、イギリスのビジネススクールは学習環境が非常に良い学校が多く、世界中から優秀な人材が集まっているようです。

アメリカ、イギリスに限らず、学習環境がよく生活しやすい国や、国を挙げて周辺の国々から優秀な人材を集めているビジネススクールも数多くありますので、後ほど「おすすめのスクール」で紹介します。

MBAランキング

ビジネススクールの世界ランキングは国内外の多くのメディアによって発表されていますが、アメリカではスタンフォード大学経営大学院、ハーバード大学経営大学院、ペンシルベニア大学経営大学院がトップ3の常連校で、イギリスのロンドンビジネススクール(LBS)やフランスのINSEAD(インシアード)も超一流のビジネススクールとして知られています。

ランキング上位校であれば、どこでも名が知られているので、就職や転職に有利になる可能性が高いです。
また優秀な人材に巡り合える確率も高くなるでしょう。

費用

ビジネススクールは1年制と2年制があり、金銭的な事情や仕事の都合で難しい場合は1年制を選ぶことになるでしょう。
国立大学のビジネススクールは、私立大学と比べると安い場合が多いので、国立大学のビジネススクールを選ぶと費用を抑えられます。

学力やビジネススキルに自信のある人であれば返済負担の少ない奨学金制度を利用できるビジネススクールを探してみるのもおすすめです。

費用や生活しやすさから選ぶおすすめのスクール

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<Photo by Stephanie Liverani on Unsplash>

アメリカやイギリス以外でも、優れたビジネススクールは世界各国にあります。

アメリカ・イギリス以外で留学先におすすめの国とビジネススクールをいくつかご紹介します。

シンガポール

シンガポールはアジアの中でも教育水準が高く、シンガポール国立大学(NUS)をはじめとしたMBAランキング上位校も存在します。

シンガポールは比較的治安も良く、世界有数の親日国ですので、優秀な日本人留学生は歓迎される傾向にあります。
シンガポール国立大学のビジネススクールは女子学生を増やすための取り組みでも知られているので、MBA留学を検討されている女性はぜひ候補に入れてみてください。

シンガポール国立大学は、イギリスの高等教育専門誌「THE(Times Higher Education)」が毎年発表する「世界大学ランキング」2020年版では25位で、日本最高の東京大学(36位)を抜くアジア屈指の名門大学です。

シンガポール国立大学MBAプログラムの学費は2年間で約1,000万円です。他のランキング上位校と比べればわずかながら学費は安くなっています。

シンガポールではナンヤン・ビジネススクール(NTU)もシンガポール国立大学と並ぶ名門校で、1年でMBAを取得できます。

ナンヤン・ビジネススクールは早稲田大学と提携しており、両校でダブルMBAを取得することも可能です。
生活費の面でいっても、アメリカやヨーロッパと比べれば食費や雑費などは抑えられるところもあります。

フランス

フランスにはMBAランキング上位常連で名門のINSEAD(インシアード)や、HEC Paris MBA(HEC経営大学院)があり、ヨーロッパでMBA留学するには最適な国のひとつです。

フランスのビジネススクールはアメリカやイギリスと比べると奨学金制度が充実しています。留学生でも住宅補助が受けられるところもあり、費用面で二の足を踏んでいる方にはおすすめかもしれません。

EMLYONビジネススクールやESSECビジネススクール、EDHECビジネススクールもランキングで上位にあがってきます。
いずれもアメリカ・イギリスの学校と比べれば学費が抑えられます。

フランスのビジネススクールといっても授業は英語で行っているので、TOEICやIELTSで受験することが可能です。
フランスのビジネススクールに入学するには3年以上の職歴が必要であるため、学生の平均年齢はアメリカやイギリスのビジネススクールと比べるとやや高めになっています。

INSEAD(インシアード)は1年でMBAを取得でき、卒業するまでに必要な学費は約840万円です。
HEC Paris MBA(HEC経営大学院)は16ヶ月でMBAを取得でき、卒業するまでに必要な学費は約700万円です。

ESSECビジネススクールは15ヶ月でMBAを取得でき、卒業するまでに必要な学費は約570万円。比較的安い費用かつ短期間でMBAを取得できます。

スペイン

スペインにはIESE Business School(イエセ)などの世界トップランクのビジネススクールがあり、ヨーロッパではイギリスとフランスに次いでMBA留学におすすめの国です。

IESE Business School(イエセ)の評価は非常に高く、「ファイナンシャルタイムズ2019 エグゼクティブ教育 世界第1位」「エコノミスト2019 MBA 欧州第2位」「ファイナンシャルタイムズ2019 MBA 欧州第3位」と世界トップクラスの実力を誇ります。

MBAプログラムは2年制で、2年間の学費は約1,000万円ですので、イギリスやアメリカの上位校と比べると学費は抑えられます。

キャンパスはスペインを代表する商工業都市のバルセロナにあり、バルセロナは欧州の中では物価が比較的安いので、現地での生活費も比較的少なくすむかもしれません。

IESE Business School(イエセ)は東京の六本木アカデミーヒルズに東京オフィスがあり、日本人卒業生が常駐していますので、詳しいことを知りたい方は問い合わせてみるとよいかもしれません。

まとめ

海外でMBAを取得するハードルは高いですが、それに見合う世界標準のスキルを習得でき、優秀な人材との出会いに恵まれるきっかけにもなります。
ランキングだけではなく、留学する国や奨学金や教育ローンを利用できるか否か、試験や卒業の難易度、生活のしやすさなどもふまえて、あなたにあったビジネススクールを選んでみてはいかがでしょうか。