マネジメント層やコンサルタントなどで取得しているイメージの多いMBAですが、実際にMBAを取得するとキャリアにどの程度役に立つのか、実感がわかない方も多いのではないでしょうか。
MBAを取った後はどのようなキャリアが待っているのでしょう。
この記事では、知っていそうで実は知らないMBAについてわかりやすく解説し、MBAを取得することのメリットや取得後の進路についても言及します。
MBAとは?
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MBAは取得した、していないと表現されることから、資格のように思われている方もいるようです。
MBA(Master of BusinessAdministration)は資格ではなく学位であり、日本の学位では「経営学修士」に該当します。
MBAの学位を取得するには、大学院に進学して経営学を学び、大学院の前期課程(修士課程)を修了する必要があります。
MBA(経営学修士)の学位を取得できる大学院のことをビジネススクールといい、ビジネススクールはアメリカだけでなく、ヨーロッパ、アジア、アフリカと世界中に存在します。
日本国内にもMBAを取得できるビジネススクールがあります。日本人の中には、留学してビジネススクールに通う人もいれば、国内のビジネススクールに通う人もいます。
国内MBAは平日の夜間や土日に通えるので、仕事をしながらでもMBAを取得でき、授業料は2年間で200~300万円程度が平均的な相場です。
国際認証機関の認証しているMBA過程としては、 慶應義塾大学大学院経営管理研究科が1978年と最も古く、有名です。他にも早稲田大学大学院経営管理研究科や立命館アジア太平洋大学大学院経営管理研究科などが認証を受けています。
テンプル大学やマギル大学は、日本でも海外MBAが取得できる数少ないスクールです。基本的には海外MBAを取得する場合は、留学することになります。
そのため、国内での仕事を辞めるか休職しないと通うことが難しく、生活費などを含めると2年間で3,000万円~4,000万円程度の費用がかかるといわれています。
企業によっては社費で社員を海外MBAに送り出す留学制度があり、この留学制度を利用している人もいますが、個人で行く場合は大きな費用負担になるでしょう。
海外の有名なビジネススクールとして、ペンシルべニア大学ウォートンスクールやスタンフォード大学経営大学院、ハーバード・ビジネス・スクールなどがあります。
MBAを取得するメリット
MBAを取得するには1~2年かかり、高額な費用も必要になりますが、時間とお金をかけても取得する価値はありそうです。
MBAを取得するメリットは次の4ポイントです。
・経営全体を俯瞰できる知識が付く
・幅広い人脈を形成する機会が増える
・年収増加や活躍の機会が得られる
・英語力が身に付く(海外で取得した場合)
それぞれを説明していきます。
経営全体を俯瞰できる知識が付く
ビジネススクールでは、経済学や会計学、金融論、経営戦略、人事戦略などを総合的に学ぶことができ、企業経営に欠かせない専門知識を網羅的に習得できます。
多くの評価の高いビジネススクールでのカリキュラムの特徴は、その実践性の高さです。
実務に役立つ広範な知識・ノウハウを習得することで、MBA取得者は経営全体を俯瞰できる一流のビジネスパーソンとして活躍できるでしょう。
幅広い人脈を形成する機会が増える
MBAプログラムがあるビジネススクールには世界中からビジネスのエリートが集まっています。業界、職種、肩書の違う人材が互いに切磋琢磨し合うことで強力な仲間意識が芽生え、卒業後も強固なネットワークが構築されることが多いです。
「ビジネススクール時代に出会った」とか「ビジネススクールで意気投合した」といった理由から、パートナーとして新たなビジネスを始めたという例は多くあります。
年収増加や活躍の機会が得られる
MBAを取得している人、いわゆるMBAホルダーは世界標準の経営知識を有していると評価され、年収アップやキャリアアップの機会がより多く与えられるでしょう。
与えられたチャンスを活かし、ビジネススクールで学んだ知識や人脈を活用することで、MBAホルダーは大きく飛躍できる可能性が高まります。
英語力が身に付く
海外のビジネススクールではすべて英語で授業が行われ、試験や論文などもすべて英語で行われます。
友人との日常会話も英語、という英語漬けの毎日を送ることで本物のビジネスシーンの英語力が自然と身につくでしょう。
苦労している中で体得したネイティブレベルの英語力は、グローバルなビジネスをするうえでの大きな武器になるでしょう。
MBAは役に立たない?
以上のようなメリットが考えられる一方で、「MBAは役に立たない」という人も少なからず存在します。
それは、実際のビジネスの現場で、学んだ経験を生かし切れていないのが主な理由のようです。
企業側の問題としては、MBAのカリキュラムでやるような複数の分野にわたってマネジメントを担うポジションを提供しづらい、単にMBAホルダーを増やすことで会社としての箔をつけたいという会社もあるという点があげられます。
一方、本人の問題としては、自分の経験に照らし合わせることができないと、いくら経営分析やシミュレーションはうまくなっても、活躍の場は期待できないかもしれません。
学んだことをいかに実務に生かしていくかが、MBAをアドバンテージにするカギになりそうです。
そのため、可能であれば休職や離職せず、実際にビジネスの場にも身を置きながら取得するのが理想でしょう。
MBA取得者の進路
MBAを取得後のMBAホルダーはどのような道を歩むのでしょうか?
多くのMBA取得者の進路として、以下の4つの素晴らしい将来が考えられます。
・日本企業や外資系国内企業へ国内就職
・海外企業へ海外就職
・派遣元企業に戻り海外事業のスペシャリスト
・起業
それぞれを説明していきます。
日本企業や外資系国内企業へ国内就職
MBA取得者は学んだ英語やグローバルスタンダードなビジネス知識を生かし、実力主義の外資系国内企業に就職するケースが多いようです。
もちろん、日本企業の中にもMBAホルダーを優遇する「MBA採用」を実施している企業があり、そのような日本企業に就職する優秀なMBAホルダーも多くいます。
ただ、一般的に外資系企業は大手の会社のマネジメント層で取得者が多いことから日本企業よりもMBAホルダーを高く評価する傾向があるようです。
中途採用でいきなり幹部として採用されることもあり、高待遇で迎えられる場合もあります。
外資系企業で能力をフルに発揮したあとに日本法人の代表に抜擢されている方も少なくありません。
海外企業へ海外就職
日本の大学しか出ていない日本人が、いい条件で海外企業に海外就職するのはなかなかハードルが高いですが、MBAを取得すると海外でも就職しやすくなる傾向があります。
MBAホルダーが海外企業で職を求めれば、アジア担当や日本担当のマネージャークラスとして採用されるチャンスもあるようです。
海外でMBAを取得した人が、MBAホルダーであることを活かして現地のトップ企業でインターンを行い、そのままスカウトされて就職するケースもあります。
派遣元企業に戻り海外事業のスペシャリストに
企業の留学制度を利用して、会社の費用で海外MBAを取得した人の多くは派遣元企業に戻り、国内で海外事業のスペシャリストとして活躍することもあります。
こういったMBA取得者は将来の幹部候補生として、ビジネススクールで培った知識や人脈を武器に社内で活躍の場を大きく広げていきます。
起業
MBAを取得する人は、自ら起業を考えているケースも多いようです。
自分で学んだ知識を自分の手で会社経営に生かし、活躍しています。スクールメイトと起業することや、MBAホルダーが集まるビジネスコンペ、アクセレレータープログラムなどに参加して起業することもあるようです。
MBAホルダーどうしの強固なネットワークは、起業をするうえで有利でしょう。
MBAはグローバルキャリアに役に立つのか?MBA取得後に期待できること
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MBAはグローバルキャリアの形成に役に立つのでしょうか?
MBA取得後に期待できることについて、以下の3つの側面から説明します。
・給料のアップが期待できる
・責任者に昇格するなどのキャリアアップが期待できる
・海外MBAであればグローバルに活躍できる
それぞれを説明していきます。
給料のアップが期待できる
MBAを取得すれば確実に年収がアップするわけではありませんが、統計上、MBA取得者の年収は一般の国内大卒者よりも高い傾向があります。
MBAを取得すると、高年収が得られる外資系企業や海外企業に転職できるチャンスが拡がり、報酬が高い企業に転職するからというのがひとつの理由かもしれません。
日本企業でも、楽天株式会社や株式会社ドリームインキュベータなどはMBAホルダーを優遇する「MBA採用」システムを持っています。
MBAホルダーを優遇する日本企業に転職すれば、年収アップが見込めるかもしれません。
また、起業で大きく成功すれば、雇われていたときとは桁の違う高年収を得られる可能性も高くなります。
MBAホルダーには、年収アップを目指すための可能性が無限に広がっているのです。
責任者に昇格するなどのキャリアアップが期待できる
社費で海外のビジネススクールに優秀な若手社員を送り出す企業は、その人物を将来の幹部候補生として育てていることもあります。
MBAを取得した後は企業の重要なセクションの責任者として抜擢されるなど、今後のキャリアアップが大いに期待されます。
責任者としての仕事ぶりが経営陣から評価されると、さらなるキャリアアップも可能になるかもしれません。
グローバルに活躍できる
国際認証機関が認証したMBAプログラムは、外資系企業や海外企業に行っても、一定の基準で評価されるでしょう。
特に、米国のペンシルべニア大学やスタンフォード大学、ハーバード大学などの超一流のビジネススクール出身なら、周りの見る目が少し変わってきてもおかしくありません。
世界中で活躍するクラスメートから卒業後も刺激を受けて、高いモチベーションで仕事に臨めるでしょう。
まとめ
<Photo by Vasily Koloda on Unsplash>
MBAを取得すると、外資系企業や外国企業への転職によってグローバルキャリアを築いたり、昇進によって年収アップをしたりするのに役立つことがあります。
一方、どんなポジションや高い年収を得たとしても、実際にMBAで学んだことを応用できなければ高額な学費と費やした時間が無駄になってしまいます。
さらに、MBAで学んだ仲間をあてにしたりすることや、授業で学んだ型にとらわれることは、今日の変化が多いビジネスシーンではかえって足かせになってしまうかもしれません。
MBAは先人の得た知識を追体験できる貴重なチャンスですが、あくまで自分のキャリアにどう生かすか、という視点で取得を検討されることをおすすめします。